あいさつには濃度があります。
あいさつの言葉を口にした瞬間の濃度を100とした時、100のまま相手に届くことも
あれば、90くらいになってしまったり、時には30くらいに薄まってしまったりします。
ここでいうあいさつとは、「おはようございます」とか「おつかれさまです」とか、
特定の相手に向かって声を出すという単純行為を指します。
「ちょっと先輩が来てるみたいやから、ごあいさつしてくる」といった
大人の社交行為を指しているわけではありません。
大物同士が「ちょっとごあいさつまでに」と意味ありげに顔を合わせる行為を
指しているわけでもありません。
あいさつの濃度は、受け手の認識具合で決まります。
1.誰が誰に言ったかがハッキリしているのがあいさつ
コミュニケーションの最小単位は、1 対 1です。
1人の人間 対 1人の人間です。
対面でも電話でも、発信者が誰で受信者が誰というのがハッキリしているのが
本来のあいさつです。
声の主が誰で、誰に向かって放たれたかがお互いタイムリーに認識できるということです。
一方、コミュニケーションには、1 対 多というシチュエーションもあります。
たとえば、出社した時の自分 対 すでにオフィスで着席している人たち、
プレゼンターの自分 対 それを聞くクライアント(顧客)の方々、などなどです。
1 対 多の場合、あいさつの発信者は確定していますが、受信者は複数います。
出社時の「おはようございます」も、プレゼン時の「この度はありがとうございます」も、
目の前の「人たち」に向かって放たれたあいさつです。
受信側は、何となく「あ、僕たちに対してのあいさつの言葉だな」と認識します。
返事をしたりうなずいたりする人もいれば、完全無視の人もいます。
受け手のリアクションはバラバラです。
受信側が10人いたとすると、1人あたりのあいさつの濃度は100÷10で10になります。
これが、濃度が薄まるということです。
放たれたあいさつが10分の1ずつ放射状に分散していくイメージです。
各人に届く頃には、薄まっています。
別に間違っているわけではありません。
1 対 多の場合は、「複数人に対してあいさつを1発で」という方が合理的です。
2.1 対 1でのあいさつではアレをプラスする
1 対 多の場合とは異なり、1 対 1だとだいぶコントロールの幅が広がります。
合理性を求める場面も比較的少なくなるでしょう。
せっかくコントロールの幅が広がるので、どうせならあいさつの濃度も
高くしたいものです。
濃度を上げるためにあいさつにプラスするアレとは、相手の名前です。
「アレ」などと伏せて引っ張りましたが、深い意味はありません。
広告代理店時代に、あいさつする時にきっちり相手の名前を呼ぶ達人がいました。
先輩でしたが、下の立場の私に対してもちゃんと名前をつけてあいさつしてくれます。
「◯◯おはよう」
「◯◯お先~」
「◯◯おつかれ」
文字にしてみると一見何でもないように見えるかもしれませんが、名前があるのと
ないのとでは、受ける印象が全然違います。
実際名前ありのあいさつをされるとわかりますが、清々しさが格段にアップします。
名前がプラスされることで、これ以上ないくらいに誰に対するあいさつかが
ハッキリします。
「自分に向けられている」という特定感を改めて味わえるのです。
あいさつが寄り道することなく、レーザービームのごとくビシュンと相手に届きます。
何ならスピードも上がります。
これが直進性を上げるということです。
濃度は100です。
場合によっては、120にもなります。
そもそも1 対 1のコミュニケーションなので受け手もわかっていることですが、
ダメ押しの一手として確定するのです。
3.あいさつの参入障壁を崩せるかどうか
名前を呼んでからのあいさつは、実は高等技術だと私は思っています。
そもそも声を出すという行為は、意識をある程度しっかり持っておかないと
いざという時にできなかったりするものです。
もちろん、何の弊害もなくスッと声を出せる人もいますが、「本心では声を出したいのに
いざとなるとスッと出ない」という人にとっては、なかなかのハードルです。
※以前にこちらの記事で
→すれ違う時にあいさつできずに、目をそらしてしまう場合の対処法
声が出にくい場合の対処法もご紹介しましたので、よろしければご参照ください。
口角コンタクトも、笑顔を相手に向けているという意味では特定感を増します。
さて、名前も言い加えるということになると、気持ち的に2つの理由から、
参入障壁はさらに高くなります。
①気恥ずかしい
②発声する文字数が増えて、面倒くさい
相手の姿を認めてから発声までの時間があけばあくほど、あいさつの価値は
落ちていきます。
コンマ何秒の世界で名前も呼ぶとなると、けっこう大変です。
結果、「名前まではいいか~」となってしまうのです。
ちなみに電話であっても、同じことです。
コツは2つあります。
①名前が先であいさつ文言があと
②名前とあいさつ文言の間をあけない
名前とあいさつ文言が逆になると、とってつけたようになって、リズム感も悪くなります。
×「おはよう◯◯」
×「お先~◯◯」
×「おつかれ◯◯」
まず名前を呼んで、ガツンと相手に的を絞ることが大切です。
それから、名前を呼んでしまったあとは流れるようにあいさつ文言も口にしてしまう
ことです。
名前とあいさつの間に1拍あけてしまうと、これまたリズム感が悪くなります。
×「◯◯、おはよう」
×「◯◯、お先~」
×「◯◯、おつかれ」
いかにも「あいさつしてやってるぞ」という傲慢な感じもプンプンしてきます。
エラそうに言いながら、私も毎回必ずできるわけではありませんが、どうせあいさつするなら
少しでもお互いの気分がよくなるように模索するのが大切ではないでしょうか。
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