クライアント(顧客)に何かを提案した時、自分(自社)の
イチ押し案が選ばれるとは限りません。
むしろ、いつも思惑とは違う案が選ばれてヤキモキしている
人もいるかもしれません。
どんなプレゼンでも、複数案を提案することが圧倒的に多いです。
プレゼンの時には「御社のオススメは?」と聞かれたりします。
そのくせフタを開けてみると、「あれ?その案ですか?」
みたいなことも普通に起こり得ます。
たとえ決定案がイチ押し案ではなくても、
ニッコリ笑って選ばれた案を応援しましょう。
1.決定案が選ばれた背景を理解する
クライアントが複数案から絞る時、背景には様々な要因が潜んでいます。
現場担当者の意見や熱い思い、上司の好み、役員の嗜好性、
会社の理念との整合性など、実に多くの要因が複雑に絡み合います。
絞られた決定案には、それなりの理由があるわけです。
言い換えると、クライアントはある意味腹をくくって案を選んでいます。
まずはそこを理解しようとするところからがスタートです。
もちろん、決定案が絞られた理由はできるだけ詳細に
ヒアリングします。
現場担当者の間で何時間も熱い議論を重ねての返答かもしれません。
もしかしたら、単純に社長の鶴のひと声かもしれません。
決定までには、人の細かい気持ちが含まれている可能性が高いです。
会社全体や現場担当者の考え方に深く踏み込むチャンスでもあるのです。
2.不満げな空気は相手を否定するのと同じこと
「えーっ、オススメ聞いてきたやん!」と口をとんがらせている
場合ではありません。
不満げな空気は相手に伝わります。
口をとんがらせるほどわかりやすくなかったとしても、
表情や声のトーンなど、クライアントは微妙なマイナス変化を
敏感に察知します。
経験上、特に女性担当者の方がその察知能力は高いと感じます。
不満げな空気が伝わる=相手を否定することです。
クライアントが決定案を絞るに至った経緯と背景を否定している
ことになるのです。
大げさではなく、会社の指針をも否定することになりかねません。
逆の立場で考えてみると、自分たちが選んだ案に対して
不穏な空気を感じると、少し寂しくなります。
「オススメは?」と聞いたうえで決めた案なら、同時に罪悪感も
背負っています。
そういうシチュエーションでは、やはり明るく後押ししてほしいと
思うのが人情ではないでしょうか。
一方、オススメ案ではないのに、何も言わずにニッコリ笑って
「いいですね。全力で進めましょう!」と言われると、
心強い安心感を覚えます。
「この人と真剣にプロジェクトを進めよう」という気持ちも
芽生えるのではないでしょうか。
3.補強することで一気に”味方感”が出る
クライアントが絞った決定案を否定しないということは、
肯定するということです。
ただし、ただ「いいですね」「悪くないですね」と言って終わりでは、
あまりにももったいないです。
ここからが営業マンの本当の出番です。
絞られた決定案に対して、補強するのです。
たとえば一番の決定理由が「コストがかからないから」だった場合、
「やっぱりコストがかからないというのは魅力ですよね」と
力強く復唱するのもひとつの補強です。
私がオススメしたいのは、新たなよさを発見するきっかけづくり
です。
同じことを説明しているにしても、自分なりの違う表現で案のよさを
導き出したり、これまでの打合せの場で当たっていなかった光の当て方を
してみると、補強に立体感が生まれます。
「その案だと、こういうよさもありますね」と再発見を促していく
イメージです。
たとえば一番の決定理由が「メインターゲットである小さなお子さんに
最もウケそう」だった場合、「お孫さんと一緒に見るという
おじいちゃんやおばあちゃんも視野に入ってきますね」と
追加説明するイメージです。
補強されたクライアントはうれしく感じるでしょうし、
何より自分たちが決定した案に対して自信が持てるはずです。
キレイで小難しい表現を並べる必要はありません。
「あ、言われてみれば確かにそうだよな」と思ってもらうことが
大切です。
営業マンはクライアントの味方であることを、しっかり証明しましょう。
営業マンがクライアント言葉で話す重要性については、こちらの記事
⇒フィルターとして言葉をろ過して、顧客のモヤモヤをスッキリさせる
もご参照ください。
ただし、イチ押し案を出した(つくった)のは、内勤スタッフ(社内部門)
であることも忘れないようにします。
イチ押し案以外を肯定するということは、イチ押し案を出した
内勤スタッフの否定につながりかねないということです。
そのあたりのバランス感覚がとても重要になってきます。
クライアントの前でイチ押し案以外の新たなよさを補強する時は、
「イチ押し案以外でもこんなにすばらしい」という
”どの案もすばらしい感”を匂わせることが大切です。
営業と内勤の部門間理解を深める方法については、こちらの記事
⇒営業と内勤の部門間対立が悩ましい時 互いに理解を深める方法
もご参照ください。
4.競合プレゼンでもスタンスは同じ
プレゼンが特名(競合ではなく、最初から自社を指名されていること)なら、
そもそも提案側としては、どの案が選ばれてもお金は入ってきます。
契約が決まっていることに変わりはないからです。
特名であれば、イチ押し案が選ばれない場合でも、気持ち的に
肯定・補強はしやすいと思います。
問題は、競合プレゼンで自社の案が選ばれなかった場合です。
私は、それでもやっぱり、ニッコリ笑って応援がいいと思います。
綺麗事抜きに申し上げると、他社案に決まるとショックです。
時には、腹わたが煮えくり返りそうになることも正直あります。
そこをグッとこらえて、ニッコリ笑って応援するのです。
他社案でも、否定されればクライアントがいい気分でないのは同じです。
不満げな空気が出やすい場面だけに、なおさらです。
逆に言うと、他社案であっても自分たちの決定背景が理解されて
さらにそのよさを補強してくれれば、相当気分がいいはずです。
「今回はごめんね」という申し訳ない気分も倍増されます。
そこで、「えーっ、ウチの案じゃないんすかー!?」と
食ってかかるのは低俗です。
もちろん決定理由などを真剣にヒアリングしたうえで、
「なるほど、そういう理由なんですね。その案なら、
こういうよさもありそうですね」とニッコリサラッと言う方が
スマートです。
「この人はうちのことを理解してくれている」もしくは
「ちゃんと理解しようと努めてくれている」と感じてもらえます。
あまり露骨に他社案をホメまくると今度は自社内の立場が
ツラくなるでしょうから、バランスは考えましょう。
時には自分の会社の看板を外してしゃべる勇気も必要です。
看板を外せば、本当に心から思っている感じが伝わります。
信用度が全然違います。
スマートな対応は、将来大きなリターンとなって戻ってくると
断言できます。
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