営業マンに接待はつきものです。
「接待」というと何となく打算的な語感を帯びていると感じられるかも
しれません。
「会食」や「会合」と銘打つ方がややクリーンに聞こえたりもします。
まんじゅうの下に謎の紙軍団が仕込まれているマンガのような場合を除いて、
接待は商慣習上深く根づいた、立派な親睦行為です。
飲食でもゴルフでも、同様です。
接待にかかる費用も、税務上は「交際費等」という項目の中で有効な経費として
利用できます。
接待は、通常はクライアント(顧客)に対して行うものです。
お金関係でいうと、払う側が払われる側から「される」ものです。
力関係でいうと、上の立場の人たちが下の立場の人たちから「される」ものです。
お酒が入ると特に、「自分が置かれた立場の力関係」を意識してしまうものです。
1.接待「される」時の態度は2種類
一般的には、接待される時の態度は2通りに分かれます。
①「されて当たり前だ」と言わんばかりに、若干ふんぞり返っている
②基本的に恐縮している
①は、最初から「うちの会社(オレ)の方が立場が上だ」と明確に意思表示
しているパターンです。
口には出さずとも、”エラいエラいオーラ”を放っています。
(ひどい人になると、接待を執拗に求めてくることもあります)
「いやいや、オレは接待されてる方なんだから、注文とったりとか料理運んだりとか、
手伝うことは一切しませんよ」と方針を決めています。
「される」側は上の立場ゆえ、知らず知らずのうちに権力意識が働いているのです。
お尻がズリ落ちそうなくらい浅く腰かけている人はわかりやすいですが、
柔和な顔で一切動かない人も、こちらのパターンに属します。
一方、肌感覚として割合が多いのが②のパターンです。
自分(たち)の方が力関係が上だと自覚しながらも、それをあからさまに表に
出したりせずに、大人として接待「される」人たちです。
状況によって、「ありがたい」と感じる感謝であったり、「申し訳ない」と感じる
負い目であったり、色々な感情が混在しています。
そして②のパターンでは、恐縮度合いも実に様々です。
2.一流企業の紳士的な態度
私が広告代理店時代に担当していたクライアントの接待「される」態度は
とても紳士的でした。
接待「する」方がさらに恐縮するくらいです。
ひと口に接待といっても、形式や規模は多岐にわたります。
「この後軽くいきませんか」も、招待状を発行するような会社対会社の正式なものも、
どちらも接待です。
私がクライアントの紳士ぶりを経験したのは、後者の接待です。
招待状を発行するくらいなので、先方からは”要人”が参加します。
「する」方も気合いが入っています。
互いの人数も多く、規模は大きめの部類です。
そのクライアントからは、毎回接待するたびに”お土産”をいただいていたのです。
「する」側の参加者全員に対して、”要人”から直接渡されます。
こちらも帰り際に”お土産”を用意しているので、お互いに渡し合う格好になります。
クリスマスプレゼントの交換会みたいになっています。
これがまた、実に清々しい光景なのです。
さすがは一流企業です。
3.接待の「され方」も、”先行投資”になり得る
「接待『される』方が”お土産”を渡すなんて、普通は考えられない。結局チャラ
じゃないか」と考えるのが普通の感覚です。
もちろん間違っていません。
接待「する」方は、日頃のお付き合いへの感謝と「今後ともよろしくお願いします」の
意味を込めて、接待しています。
直接的な”謝礼”をその場で受け取る気など、最初からさらさらありません。
でも、そのクライアントは違いました。
接待「された」側として、誠意を示してくれたのです。
しかも毎回です。
開催への感謝の気持ちと、「これからもよろしく」というビジネスパートナーとしての
対等目線での配慮が垣間見えました。
そりゃあ、業績が好調なのもうなずけます。
協力会社に思いやりを持って接することができる会社は、お客様に対しても必ず
気遣いの心を忘れません。
接待当日に”お土産”を用意しようと思ったら、色々と段取りが必要です。
接待「する」側=”お土産”を渡す相手の人数の把握、いつまでに揃えておく
必要があるかなどのシミュレーション、経費の申請、当日の持ち運びの段取り。
裏でかなりの手間がかかっているはずです。
その手間を経由しての”お土産”です。
接待してくれた人に物品を渡しましょうと言いたいのではありません。
ましてや、高い安いも全く関係ありません。
たとえば、即日”要人”が直筆のお礼状を送るというのもひとつの手です。
大切なのは、接待「される」側としての姿勢です。
いかに感謝の意を表せるかということです。
翌日にお礼の電話を入れることももちろん素敵な行為です。
ただ、接待当日に何らかのアクションで示されると、破壊力が違います。
こうした紳士的な姿勢は、他意がなかったとしても、結果的に”先行投資”の色合いを
帯びます。
接待した方は、「こんなに誠意あるクライアントなのだから、これからももっと
全身全霊を捧げよう」という気持ちが強くなるのです。
純粋な感謝の気持ちが、時を経て何倍にもなって返ってくるのです。
ちなみに紳士といっても、接待の会食がカッチカチのカタい雰囲気である必要は
ありません。
会自体は仲良く打ち砕けた親睦の空気で問題ありません。
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