何か特別にヒドいことをされたわけではないのに、
「この人とは何となく合わないなあ」と感じることがあります。
逆に、相手から「あんたとは何となく波長が合わへんわ」と
感じられている場面もあるかもしれません。
特段悪いことをしていないのに相手にそう感じられると、ツライです。
原因は種々あり得ますが、「相手の表現に合わせていない」ことも
そのひとつとして考えられます。
1.言葉を合わせる
特に相手がクライアント(顧客)の場合、「何となく合わない」と
思われることは、営業としては致命的です。
ハッキリと説明しにくいこの「何となく」は、なかなかやっかいです。
一番わかりやすいのは、相手が使っている言葉です。
同じ内容を言い表すのでも、人によって選択する言葉は違ってきます。
たとえば、ビジネスメールの冒頭文では、たいてい「自分がお世話になっている」
ことを表現します。
言い方は人によって本当に様々です。
●お世話になっております
●いつもお世話になっております
●お世話になります
●お世話になっています
●いつもお世話になっています
●いつもお世話になり、ありがとうございます
挙げるとキリがありません。
メールが1往復すると、お互いが”何派”なのかがわかります。
「僕は『お世話になります』派やけど、この人は『いつもお世話に
なっております』派かあ」といった感じです。
”「いつも」をつける派”の人に対しては、どことなく「ていねい派閥の人」
という印象を持ってしまったりもします。
「ありがとうございます」までついた日には、最高級レベルです。
そこで相手の言葉に合わせられるかどうかで、印象は変わってきます。
「お世話になります」文言は、その人の信念といってもいいくらい、
同じ表現が使い続けられる代表格です。
今まで「お世話になります」と書き続けていたところを急に
「いつもお世話になっております」に変えるのは、違和感があるかもしれません。
でも表現を”合わせられた方”は、「お」と感じます。
もしかしたら気づかないかもしれません。
全く気にしない人かもしれません。
たとえ無意識化でも、言葉の同調力は侮れません。
逆に言うと、微妙に違う表現を使用することで、相手には少し否定されたような
感情が残ってしまうということです。
無意識に反感感情が蓄積されるのは怖いです。
「どうせ同じ意味のことを言うなら、自分が使う言葉と同じ方が感じがいい」
と思うのが人間です。
2.専門用語は要注意
相手の表現に合わせることがプラスに作用するのは、メールでも会話でも同じです。
営業マンは、理解しにくい専門的な内容をわかりやすい言葉に変換するのが役目
であることは、こちらの記事
⇒フィルターとして言葉をろ過して、顧客のモヤモヤをスッキリさせる
でもお話しました。
今回の場合は、相手が最初から用いている「専門用語ではない表現」を重視する
という意味です。
プロは、自分が属する業界の専門用語を自然に口に出します。
悪気はありません。
普段から使い慣れているからです。
一方、お客様など、自分の業界に精通していない相手の場合は
そもそも専門用語を知らないので、一般語で表現したりします。
「意味はわかっているが専門的な表現を知らない」という状態です。
たとえば、マンションの建設現場を見学できる機会のことを
プロは「現見(げんけん)」と言ったりします。
お客様側は、「見学会」とか「現地見れるやつ」と言います。
「すみません、○○マンションの見学会に参加したいんですが」という問合せが
あった時に、「はい、○○の現見ですね」とうっかり答えてしまったとします。
この時点でアウトです。
お客様は「見学会」と言っているのです。
「現見」と言いたいのをグッとこらえて、「はい、○○の見学会ですね」と
答えられるかどうかです。
1回目は口が滑ってしまうこともあるので、2回目以降でお客様表現に
合わせられたらまだ挽回できます。
3.表現レベルを相手に合わせるのが本当のプロ
問題は、ひたすら表現を変えないパターンです。
お客様が「見学会」と表現しているのに、いつまでたっても
「それでは現見の日程を確認致します」とか「他にも△△マンションで
現見の予定がございます」とか言い続けるパターンです。
意固地にもほどがあります。
そのうち「では□□日の現見をお願いします」とお客様の方がプロの表現に
合わせてくるようになったら、もう目も当てられません。
使い慣れているからといって、自分の表現を貫き通すのは賢明ではありません。
相手の表現に合わせる行為で、知的レベルが下がるわけではありません。
むしろ逆です。
言葉の同調は気持ちのリンクを呼びます。
相手を気分よくさせる、少なくとも「合わないなあ」というマイナス感情を減らす
高等技術です。
表現レベルを相手に合わせられるのが本当のプロです。
相手の気持ちに寄り添う立派なひと手間なのです。
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