最近のテレビ番組を見ていると、本音を口にすることが歓迎されている風潮が
見られます。
本心で思っていることをあえて口に出してみるとか、業界の裏話を暴露するとか、
ぶっちゃけ系のコンテンツが増えてきているように感じます。
ひと昔前なら「そんなことテレビで言うたらアカンやろ」と考えられていた内容が
逆に今は重宝されてきている傾向が見てとれます。
コンプライアンスの厳しさとは反比例した増え方です。
現代人が1日に接触する情報量は、江戸時代の人たちのおよそ1年分という説があります。
人が接触する情報量は日々増加し続けており、能動的に集めずとも、受動的に情報洪水に
さらされるのが現代です。
そんな潮流を受けて、「どれがホンマの情報なん?」という真偽を見定めたい気持ちが
どんどん大きくなるのはある意味自然の流れなのでしょう。
1.本音を知りたいのは個人間のコミュニケーションでも同じ
テレビでタレントさんがぶっちゃけ話をしているのを聞くと、自然に好感度が上がったり
します。
「ここでそれ言うか」という内容が、発言者への興味をグイグイ喚起します。
無条件に信用してしまうことすらあります。
(なかには、あえてアホのフリをするという高等テクニックを使う人もいるようですが)
本音を知りたいと思うのは、個人間のコミュニケーションでも同じです。
本音トークは、心の距離を縮めます。
腹を割って話せるかどうかが、相手との親密度を図るひとつのバロメーターに
なることもあります。
ただし、何でもかんでも思ったことをすぐに口に出せばいいというものでもありません。
それだと子どもと同じ言動パターンになってしまいます。
本音で言いたいことがある→実際に口に出す、の間にタイムラグを設けられるのが大人です。
永久に口に出さない、という選択肢もあります。
現実的にはコンマ何秒の世界ですが、脳の指令から発声までの切替え装置を、いかに思いやりを
持って作動させられるかです。
2.悪意なき本音が一番傷つく
私自身を振り返ってみても当てはまりますが、人に何か言われて傷ついた時というのは、
相手が悪意なくサラッと放ったひと言による場合が意外と多いのではないでしょうか。
相手に「傷つけてやろう」という意図は特にありません。
何げなく思ったことを口にしただけです。
少なくともその場では、口が滑ったという感覚すらありません。
聞き手から指摘されない限りは「傷つけた」という認識は芽生えません。
これがなかなか厄介です。
もともと悪意がないため、発言者に切替え装置を作動させるという発想自体がありません。
故意ではないので、ハッキリ言ってどうしようもありません。
内容からタイミングから予測不能な災害のようなもので、発言を止める防止策はないのが
実情でしょう。
ただ、それもひとつのコミュニケーションではないかと私は思います。
自分が傷ついたひと言は、ヘタしたら一生心に残ります。
場合によっては日常生活にも支障をきたすことさえあります。
が、見方を変えれば、感情に起伏を与えてくれているとも解釈できます。
もちろん言われた当人はツライですが、フラットに難なく生き続けるよりも、”負の感情”も
含めてデコボコがあった方が人間生活っぽい、と考えれば少しは気が楽になると思うのです。
ここで、「よし、相手の考えていることを手にとるように把握するために、読心術を
勉強しよう!」といきなり宣誓し出す人がいるかもしれません。
それも人生です。
私は止めません。
3.これから本音の厳しい発言をすることを自覚している場合
では、発言者が「これから本音で厳しいことを言う」ことを自覚している場合は
どうでしょうか。
自覚しているということは、切替え装置を作動させる余裕がある状態です。
口に出すタイミングも操り放題です。
ヘタしたら、相手が負うダメージの大きさや種類も予測できています。
そんな時は、こう前置きをつけてみましょう。
「今から厳しいこと言いますよ」
「今からひどいこと言っていい?」
せっかくこれから自分が厳しいことを言うことを自覚しているので、あえて先に
口に出して伝えておくのです。
「これから攻撃するから、ちゃんと防御の姿勢をとりなさいよ」と宣告するのです。
こう宣言されれば、聞き手はもちろん身構えます。
今から話される内容やジャンルが想定できているのといないのとでは、聞く態勢に
大きな差が生まれます。
言い換えると、否が応でも真剣に聞こうとします。
「耳で音声として認識」と「脳で内容を吟味」が同時に起こります。
聞き手にとってツライ内容であればダメージを受けることに変わりはありませんが、
不意のひと言よりはだいぶやわらぐはずです。
最初から「そのつもりで聞いている」からです。
4.前置きをどんな表情/トーンで言うかで空気は変わる
相手のダメージをやわらげてあげるための前置きですが、どんな表情/トーンで
言うかによっても空気は変わってきます。
かなり真剣な表情で、ゆっくり落ち着いた低めの声で言った場合。
相手は相当身構えます。
体カチコチの汗ダクダクです。
「ちょっとその前にトイレ行っといていい?」などと言う余裕はないでしょう。
やわらかな笑顔で、さわやかな声音で言った場合。
相手も気軽に応じられそうに感じます。
「うん、言って言って」と軽めに返事しやすいでしょう。
真剣なトーンで言う場合は、言う方も真剣に相手のことを考えているんだぞという
真摯な姿勢が伝わります。
笑いながら言う場合は、相手の身構え方をかなりやわらげる効果があります。
そして最悪の場合、「冗談にできる」という大きなメリットがあります。
笑いながら前置きしておけば、予想以上に相手がダメージを受けているような時に、
「いやいや、冗談やから」とフォローしやすくなります。
いずれにしても、聞き手の意識に「今から厳しいことを言われる」という事前情報が
インプットされることに変わりはありません。
お酒が入った時や議論が白熱した時は、つい勢い余っていきなり本音をしゃべって
しまいがちです。
本音トークを望んでいる相手であっても、ショックを受ける時は受けます。
いかにムダなダメージをおさえて建設的な会話を展開するかが、コミュニケーションに
深みを与えるうえで大切になってくるのです。
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