握手のパワーはスゴイです。
欧米諸国では、ビジネスシーンで握手をするのはあいさつの1種です。
日本では、お辞儀に比べてそこまで習慣化していません。
みんな、頭では「握手がいいこと」なのはわかっています。
でも実際にしている人はまだまだ少ないように思います。
慣れていない人にとっては、気恥ずかしさもあるのでしょう。
握手を取り入れないともったいないです。
イメージ通り、親近感をわかせる行為としてうってつけです。
1.相手と同格以上の時には、積極的に手を差し出してみる
ただ単に自分から握手を求めまくると、失敗します。
機械的な”握手魔”では、引かれてしまいます。
相手が自分とどういう関係にあるかで分けましょう。
クライアント(顧客)や目上の相手に対して自分から手を
差し出すのは、やはりマナー違反です。
「おお、この若者は積極的だな」とホメられることはありません。
「グイグイきすぎて失礼やん」と思われて終わりです。
自分から手を差し出すのは、こちらが相手と同格以上の立場の場合です。
年上と年下、発注者と受注者、同級生、関係は色々あります。
握手慣れしていない相手であれば、手を差し出されると、
ほんの一瞬ですがにわかにビックリします。
でもそれは予想外だっただけで、たいていは受け入れ態勢をつくってくれるので
大丈夫です。
こちらから手を差し出すということは、心の距離を縮めようとする意思表示です。
大小の差はあれど、敬いの気持ちがなければそもそもできません。
差し出された方は、安心感を覚えます。
積極的に活用しない手はありません。
私もサラリーマン時代、格上の相手から握手の手を差し出されて
親近感を覚えた経験が何度かあります。
ただし、こちらが男性で相手が女性の場合は要注意です。
たとえこちらが同格以上であってもです。
ヘタしたら、何かのハラスメントと間違えられます。
逆に、こちらが女性で相手と同格以上の場合は、自ら手を差し出す行為は
カッコイイです。
余裕のある、”できるキャリアウーマン”という感じがします。
2.両手で包みにいかなくてもいい
たまにビジネスマナーの本で、「両手で包むような握手をするとよい」と
書かれています。
政治家がよくやるアレです。
私は普通でいいと思っています。
政治家のような、握手数と得票数が比例しそうな職業の人を除いて、
通常のビジネスシーンでアレをやると、ちょっとわざとらしいです。
いかにも「本に書いてありましたー」という感じです。
普通のビジネスパーソンが両手を使うのは、本当に心の底から
感動した時です。
かつ、自分が差し出される側だった場合です。
意図的に「包む」のではなくて、気持ちが前面に出て
「包んでしまう」状態です。
両手バージョンは、自然に出てしまうほど心が動いた時のために
とっておく方がいいです。
ちなみに片手とは、右手が原則です。
左利きであったとしてもです。
左手で握手をすることは、世界のあちこちでマナー違反だとされています。
3.力みすぎも、脱力しすぎも不安になる
力の入れ具合はどうでしょうか。
これは各所で言われているように、「適度に強く」が私もいいと思います。
片手の適度な強さで、いかに”包み込んでいる感”を出せるかが
握手センスの見せどころだと思います。
張り切ってギュウ~っと握ると、痛いです。
「いやいや、骨折れるがな」と思われたら、悪印象しか残りません。
ただただ攻撃的な人、というレッテルを貼られて終わりです。
逆に、あまりに弱々しい握手も考えものです。
「この人やる気あるんかいな」と疑われて終わりです。
親近感は遠のきます。
力の加減を気にする必要があるのは、手だけではありません。
肘の脱力具合も意識しておきましょう。
たまに、肘をピーンと張って手を差し出してくる人がいます。
気合いが張り裂けそうです。
あんまりシャキッと差し出してしまうと、相手に無用なプレッシャーを
与えてしまいます。
肘ピーンは、相手から腕1本分の距離をとることになります。
物理的に離れざるを得ないので、親近感も離れがちになります。
肘は適度に曲げてゆとりをもち、リラックスさせましょう。
ダランとしすぎても、握手の位置が下がって結束感が薄れます。
4.タイミングは別れ際
自分から差し出す握手は、いつでもどこでもすればいいというものではありません。
ベストタイミングがあります。
別れ際です。
名刺交換や出会った瞬間など、”最初のタイミング”では
私はあえて握手は封印しておくのがいいと思います。
(相手が外国人の場合は最初から握手を取り入れた方がいいこともあります)
握手の有用性は疑う余地のないものですが、乱発すると価値が下がります。
直接他人と触れ合う行為は、急激に心理的距離を縮めます。
日本人にとってはまだまだなじみの薄いあいさつであるものの、同じ日に
何度も握手すると、だんだん慣れてきます。
だからこそ、”ここぞの1回”にとっておくのです。
それが、別れ際です。
「ありがとう」という意味の時もありますが、「これからよろしく」という意味の時の
方が、より適しているでしょう。
最後の最後で手を差し出されると、出された側は自分が意識している以上に
つながりを感じてしまうものです。
手を差し出されたということは、相手は同格以上の人のはずです。
ビックリの直後に、じわっと安心感がやってくる順番です。
5.握手とお辞儀は両立しないのか
特に外国人との間では、「握手しながらお辞儀してはいけない」とよく言われます。
日本マナー・プロトコール協会のホームページにも、そう書いてあります。
そもそも外国には、基本的にお辞儀の文化がありません。
お辞儀=屈服の意味で解釈されることもあるようです。
私は両立していいと思っています。
ただし、差し出された側に限ります。
手を差し出した人が握手しながらペコペコ頭を下げていると、
「どっちやねん」となります。
オバマ大統領は2009年の来日時、天皇皇后両陛下と対面した際に、
握手とあわせて深々とお辞儀もしました。
アメリカの人たちからすれば、相当奇異な光景だったでしょう。
実際、アメリカ国内では物議を醸したそうです。
オバマ大統領自身も、自国の文化にはないお辞儀をすることで
批判を浴びることは容易に想像できたはずです。
でも、国のトップがその習慣通説を覆したのです。
ではなぜお辞儀をしたのか。
真意は本人にしかわかりませんが、私はシンプルに、
日本の礼儀作法を本心から理解してくれていたのではないかと思います。
一家系で2千ウン百年も存続している皇室や、日本そのものの
歴史性と伝統性に敬意を表してくれた可能性も充分考えられます。
外交手腕がどうとか、ミシェル夫人はなぜ不在だったのか
ということはいったん置いておいて、単純に、1人の人間として
尊敬できる行動ではないでしょうか。
背負ったリスクは相当大きかったはずです。
握手をする時に両立するお辞儀とは、
手を差し出された側が思わず頭を下げてしまうことです。
打算とかそういうことではなく、人間として自然に出てしまう振る舞いです。
感情昇華の所作です。
そういう意味では、前述の「両手で包んでしまう」状態と似ています。
握手は、1対1の儀です。
試合前の円陣で手を重ねる「ファイト!オー!」的なものは含まれません。
1人の人間同士が互いの尊敬エネルギーを交流させる、本音の儀式なのです。
手が冷たいからと、気にしている場合ではありません。
手が冷たいことを相手から指摘されたら、「えへへ、心があったかいもので」とでも
返しておきましょう。
ただ、手汗をかく場合は、握手の前に拭きとっておくことをオススメします(笑)
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