「クライアント(顧客)先を訪問した際、まずは世間話でもして
場をほぐしましょう」とよく本に書かれています。
いきなり本題(商談)に入ると、相手もまだ心の準備が
できていないし、そもそも失礼にあたるから、というのが
主な根拠です。
私も打合せの場は空気をやわらかくした方がいい
という考え方なので、異論はありません。
ただ、それができない人も中にはいます。
「軽く世間話がしたいのに」という気持ちはあるのに、
人見知りだったり、そもそも雑談が苦手というタイプの人です。
とっかかりの世間話ができないなら、逆に最後のシーンで
放つひと言に賭けてみましょう。
1.打合せは、別れるギリギリまで続いている
商談や打合せは、お互いの話が済んで、机を挟んで「ハイ、以上」と
なったタイミングが終了時ではありません。
机を挟んでの「ハイ、以上」では、まだお互いに座っています。
そこから実に色んな動きが出てきます。
①筆記具をしまう
②机の上の書類を揃える
③自分のカバンを手元に引き寄せる
④揃えた書類をカバンにしまう
⑤(イスがあれば引いて)席を立つ
⑥(イスがあれば)立ってからイスを戻す
⑦打合せ部屋(応接室)のドアに誘導される
⑧ドアをくぐって部屋を出る
⑨(エレベーターもしくは出口に向かって)歩く
⑩(エレベーターがあれば)相手が「下」のボタンを押す
⑪(エレベーターがあれば)ホールで到着を待つ
⑫場合によっては相手もエレベーターに同乗する
⑬(エレベーターが目的階に到着したら)相手がドアをおさえてくれる
⑭出口まで歩く
⑮あいさつして別れる
この間、ずーーーっと無言でいることはあり得ません。
逆に言うと、「ハイ、以上」から別れるまで、これだけの会話チャンスが
あるということです。
2.終わりの「際(きわ)」は、最も心が弛緩しやすい
終わりの「際」というのは、最も心が弛緩しやすいタイミングです。
心理学でいうところの、テンション・リダクションです。
テンションが「緊張」、リダクションが「縮小」で、
「緊張から解放された状態」のことですね。
マーケティングの世界では、このテンション・リダクション効果を
用いた理論も実際に存在します。
ハンバーガーショップの「あわせてポテトもいかがですか?」が
典型的な例です。
「この商品を買おう!」と決めた直後の、心が無防備な時に
”ついで買い”を促すという手法ですね。
話が逸れましたが、本記事は”ついで買い”を促すのが
目的ではありません(笑)
打合せ(商談)中に神経を集中させて、多かれ少なかれ
緊張状態にあるのは、相手も同じです。
打合せ(商談)が終われば、相手も気持ちが緩んでいる
状態だということです。
気持ちが緩んでいるということは、こちらの言葉を受け入れやすい
状態だということです。
打合せ(商談)自体を訪問の核心とした場合、前述の①~⑮は
全て「終わり際」のタイミングです。
そのタイミングをうまく活用しましょう。
3.席の立ち際にひと言だけ発する
「終わり際」のタイミングは前述のように色々ありますが、
私は経験上、席の立ち際か部屋からの退室際にひと言を
発するのがいいのではないかと思います。
この段階までくれば、人見知りを自覚している人でも
少しは話しやすくなっているでしょう。
少なくとも対面した瞬間よりは、緊張具合もマシになっている
はずです。
発するひと言は、ユーモア系が適していると思います。
ユーモア系というと、テレビで活躍する一級の芸人さん並みに
おもしろいことを言わなくてはいけないのかと構えるかも
しれませんが、そんな必要は全くありません。
ちょっとクスッとするくらいの、軽い冗談のノリで充分です。
カタい話ではなくて、やわらかめの話題ということです。
ただしネタは、打合せ(商談)中に出てきた話をなぞる
ようにします。
全く脈絡のない一発ギャグや、急にどうしたんだと思われるような
ダジャレなどはやめましょう。
たとえば打合せ(商談)中に何かのきっかけで相手の実年齢の話が
出たなら、チャンスです。
「まさか○○さんが△△歳とは思いませんでした」と言いながら席を立ちます。
ポイントは、言いながら席を立つことと、言葉選びです。
内容は、相手をホメています。
普通の場面で言うと、たとえこちらが本当に思っていても、相手によっては
ただのおべんちゃらだと解釈してしまうかもしれません。
「○○さんは△△歳に見えませんね」ではありません。
あくまで自分が感じた気持ちを忠実に言葉にして、
冗談のノリっぽく伝えます。
気持ちが弛緩しているタイミングで、何かをしながらホメの内容を
言われると、嫌味を感じにくいです。
相手もスッと素直に受け取りやすいということです。
自然にクスッとなります。
私はサラリーマン時代、席の立ち際のタイミングを
活用しまくっていました。
もちろん年齢の話に限らず、慣れてくると立ち際のタイミングで
色んなひと言が浮かんでくるようになります。
刑事コロンボや古畑任三郎、『相棒』の杉下右京といった人たちの、
「あ、そうそう、あとひとつだけ」のノリです。
まるで最初からそのひと言を言うことが目的だったかのような、
ふと思い出したようなトーンですっとぼけて言っています。
本気なのか冗談なのかわからないトーンで言われると、
妙に心に残ります。
気持ちが緩んでいるタイミングなので、なおさらです。
そしてその終わり際に放たれたひと言が、ちゃんと打合せ(商談)を
聞いていたという印象をも残します。
ちなみにユーモア系以外で、打合せ(商談)内容をなぞらないひと言
という荒技もあります。
たとえば、席の立ち際にサラッと相手の誕生日の話題などを口にすると、
オシャレです。
「そういえば○○さん、来週誕生日ですよね」
これだけで充分です。
相手の誕生日を把握していることが前提ですが、覚えてもらっている
という事実に、相手は喜びます。
ただし、誕生日がいつかわかっていてそれを口にした以上は
ちゃんと当日にもお祝いの言葉を届けましょう(笑)
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