初めてアノ味を食したのは、確か高校生の時でした。
友達が「オススメのラーメン屋がある」というので、
大勢で入店した記憶があります。
「こってりやで」とさんざん前置きされていました。
当時は「こってり」の意味がよく理解できず、
「ああ、こってりなんやな」と心の中でただオウム返しをしていました。
注文後、運ばれてきた器の中身を見て、驚愕しました。
いやいや、スープ半分やん!
「こってり」事情について何も知らなかった当時の私が抱いた、
素直な感想です。
本当にスープが半分くらいしか入っていないように見えました。
麺がスープを吸い込むスピードが速すぎて、
半分ブヨブヨなのかという疑いを抱きました。
お店側がケチっているのかとも思いました。
危うくクレームを入れるところでした。
しかし、味は最高でした。
”サラサラ”とは対極にあるスープが、クセになります。
ようやく「こってり」の意味が理解できました。
受け付けない人は全くダメなようですが、私にはツボでした。
それ以来、ずーーーーっとファンです。
さすがに今はスープの量を冷静に見れます。
関西人にはおなじみ、天下一品。
こってりスープで有名な、ラーメンチェーンですね。
今や全国的にもその名は知れ渡っているようです。
今でも隙あらば立ち寄る天下一品ですが、とあるお店で、
秀逸な芸術に出会いました。
これです↓
何かのオブジェかと思いました。
頂点までの高さは倍以上になっています。
どこかのお客様がイタズラかストレス発散で成し遂げた技という
可能性もあります。
好奇心がおさえられなかった私は、つい店員さんに
話しかけてしまいました。
「これ、すごいことになってますね」
気さくな店員さんの答えは、私が想像していなかったものでした。
「割りばしって、お客様が倒してしまうことがあって、
けっこうバラバラ~って散らばってしまうんです。
こうやって上に刺しといたら倒れても散らばらないんで、
お客様に迷惑もかからないんです」
なるほど!
実は、お客様のことを思っての配慮だったのです。
上に刺し足したのはお客様ではなく、他でもないお店側でした。
こういうひと手間は、お客様を惹きつけます。
「割りばしの高さを2倍にしましょう」と言いたいのではありません。
「芸術を爆発させましょう」と言いたいのでもありません。
大切なのは、
「その事象がお客様にどういう影響を与えるか」を
考え、先回りして対処することです。
今回のお店の例では、「お客様が割りばしを倒す」という
過去の経験にもとづいた施策でした。
未来をシミュレーションするのと同様に、こういった
過去から改善策を打ち出すのも非常に有用です。
いずれの場合も、お客様の気持ちを想像するという背景があります。
お店側がお客様の気持ちを想像して先回りした結果、
3つの副産物が生まれました。
①お客様とのコミュニケーションのきっかけをつくり出した
普通は、この割りばしを見ると「ん?」と思います。
私のように、つい話しかけてしまう人も現れるでしょう。
話しかけることはなかったとしても、店を出てから
誰かにしゃべるかもしれません。
SNSにアップするかもしれません。
単純に「物珍しい」という内容だけだったとしても、
口コミの芽を生み出した状態になっています。
ポイントは、自分からわざわざ説明しないということです。
「あなたたちが倒す恐れがあるので、割りばしの高さを
2倍にしています」という貼り紙を貼る必要は全くありません。
お客様のためにしていることは、「聞かれたら答える」という
スタンスだからこそ価値があるのです。
②①によって、店員さんの人柄が垣間見えた
コミュニケーションのきっかけができることは、
お店側からアピールする機会が1回増えることにもなります。
コミュニケーションチャンスは一方通行ではなく、双方向です。
今回は、回答してくれた店員さんの人柄が伝わってきました。
”割りばし2倍”の理由にまつわるお店のスタンスに加えて、
それを語る店員さんの気さくな人柄に、あったかいものを感じました。
お店の姿勢を伝えながら、「そこで働いているのはこんなに感じのいい人」
ということも同時にアピールできているのです。
もちろん店員さんにそんな打算はないでしょう。
自然に伝わってしまうのが、いいところです。
③ムダなコストがカットできている
お客様が割りばしを倒してしまった時、テーブルの上にとどまらず、
床に散乱してしまうことも充分に考えられます。
床に散乱した割りばしはどうなるか。
廃棄せざるを得ません。
そのまま割りばし入れに戻してしまうお店もあるかもしれませんが、
その状況を他のお客様が目撃していればアウトです。
廃棄するということは、その分の原価がムダになるということです。
まだ誰も使っていないサラの割りばしにもかかわらずです。
この”割りばし2倍”戦術は、
ひょっとするとムダになるかもしれない割りばしの数を激減させています。
コスト意識の向上にもひと役買っているのです。
最初はインパクト重視の戦略で攻めているお店かと思いきや、
実はお客様思いの細かな配慮があったんですね。
この”割りばし2倍”戦術、背景を聞くととてもあったかいですが、
見た目はなかなかワイルドですので、取り入れられる場合は
自己責任でお願い致します(笑)
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