エレベーター前で客人をお見送りする時、頭をいつまで下げておくかという
議論があります。
ちなみに客人とは、クライアント(顧客)とは限りません。
協力会社の人であっても、場合によっては社内の要人であっても、
訪問者は客人扱いです。
エレベーターが「閉まるまで」頭を下げましょうと書かれている本もありますが、
「閉まるまで」ではまだ不充分です。
私は「閉まってからもしばらくは」頭を下げ続けておくのが
理想だと思っています。
「閉まるまで」で止めてしまうと、不慮の事故が起こった時にやっかいです。
事故と言うと大げさですが、閉まった直後にドアが再び開いてしまうことがあります。
たとえば、後ろから猛烈な勢いで走ってきて「▽」ボタンを連打し、
閉じかけのドアをこじ開けてしまう人もいます。
そういう時に限って、間に合って開きます。
走ってきた本人は、神業を披露して満足げなドヤ顔を浮かべていたりします。
ご想像の通り、いったん閉まったドアが開くと、お見送りした客人が
再度視界に入ります。
「閉まった」段階で頭を下げ終わっているので、見送り側はもう
顔を上げてしまっています。
ほぼ100%目が合います。
「あ」となります。
向こうも「あ」と思っています。
これはけっこう気まずいです。
ヘタしたら、やることやって安心して、若干の達成感とともに
スタスタとその場から去ってしまっている可能性もあります。
エレベーターの中の客人は、見送り者の背中かふくらはぎあたりを
見ることになります。
見送られる側からすると、これはちょっと寂しいです。
本当はお見送りはていねいな行動なのに、なぜかちょっと
手抜き感が残ってしまいます。
ムダに損をしてしまうことになります。
ドアが閉まってからも頭を下げ続けていると、この事故はかなりの確率で
回避できます。
時間にして、閉まってから2~3秒といったところでしょうか。
現実的には神業クンが走ってくることの方がまれなので、
そうそう不意にドアが開くことはありません。
ムダになってもいいのです。
予想だにしなかった状況でこそ、その人の普段の姿勢は伝わりやすいです。
そして不意にドアが開いた時に見送り者の頭が下がっていれば、
好感度の残像も倍増します。
私もサラリーマン時代に、「閉まってもしばらく頭を下げておく」を
できるだけ実践しようと心がけていましたが、正直言うと
これができそうでなかなかできないこともあります。
数えてみるとわかりますが、2秒は意外と長いです。
誰も見ていないのに、けっこう恥ずかしかったりします。
頭を下げながら、「やっぱ目は開けっ放しの方がいいよなあ」とか
考えたりもします。
はっきり言って、実践している人は少ないです。
でも、だからこそ、取り入れるとかなり目立ちます。
不慮の事故率は低くとも、普段から意識していれば、
必ずいいクセとなることは断言できます。
逆に、見送られる側として、頭を下げ続けられたこともありました。
私がエレベーターに乗り込んでドアが閉まった後、不意に再び開きました。
(やはり、どこからともなく現れた神業クンの仕業でした)
開いたドアの方を見ると、何と目の前で、見送り者が頭を下げ続けてくれていたのです。
その見送り者は、クライアントでした。
お金を払う側の立場の人です。
衝撃でした。
同時に、身が引き締まる思いでした。
何とも言えない心地よさとともに、エレベーターのブゥンという移動音を
聞いていた覚えがあります。
奇跡的な確率で、神業クンが何回も現れた場合はどうでしょうか。
やはり、その都度「閉まってからしばらく頭を下げる」を繰り返すのが理想です。
1回目ドア閉まる→頭を下げ続ける→神業クン①登場→2回目ドア閉まる→頭を下げ続ける
→神業クン②登場→3回目ドア閉まる→頭を下げ続ける・・・(以下リフレイン)。
ここまでくれば相当なお辞儀マスターです。
エレベーター前で頭を下げる議論には、長さという”時間的要素”の他に、
角度という”姿勢的要素”もあります。
私は、適度な深さであれば、別に何度でもいいと思います。
「来てくれてありがとう」の気持ちがあれば、不思議と伝わるものです。
かといって、立位体前屈ぐらい下げても下げすぎですし、
ハトみたいに首をプッと斜め下に出すだけではさすがに浅すぎます。
そこは各人の判断で問題ないでしょう。
ちなみに、見送り側が複数人いる場合、エレベーターが閉まった直後から
仲間同士でペチャクチャしゃべるのは、ちょっと考えものです。
不意にドアが開いた時の見送られ側の心の中は、「あ」では済まずに、
「あ、しゃべってるやん」に変わります。
何となく感じの悪い後味が残ります。
閉まった直後のおしゃべりは、実はエレベーターの中の人に
一瞬聞こえています。
「あいつ、最悪だったよね~」などと言おうものなら、
ほぼ聞こえていると思っておいた方がいいです。
契約行為が進んだあとなどのタイミングだと、目も当てられません。
おしゃべりは、エレベーターから離れるまで我慢しましょう。
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